2日目は群馬県多野郡上野村にあるバイオマス発電施設やペレット工場などを視察しました。一般社団法人上野村産業情報センターの石井様より上野村の概要や上野村が実施している森林整備事業への支援、木質バイオマスの利用等についてご説明いただき、その後に石井様同行のもと現地視察を行いました。
上野村は、面積の95%以上が森林であり、手つかずの大自然が残る緑豊かな森の郷です。村の人口は1,069人ですが、そのうち約20%の230名がIターン者です。過疎化を食い止めるため、1965年から40年にわたり任期を務めた村長みずからリーダシップをとり、森林資源を活かす地方創生をいち早く行っていた自治体です。その50年の努力が実り、近年はIターン移住者が人口の約20%近くを占めています。
過疎からの脱却への挑戦として、まずは林業の6次化に着手。村が補助金から機械貸出、作業道整備、森林整備計画まで搬出間伐を支援し、間伐材などを有効活用するため、2011年に木質ペレット製造工場を稼働さました。急峻な山が多い上野村は戦後の植林が進まず、針葉樹よりも広葉樹が多いのが特徴で、木質ペレットは、カラマツや杉などの針葉樹と広葉樹などの未利用材が使われています。森林資源確保のため25年の長期素材生産計画を立てています。
バイオマス発電は、ドイツのブルクハルト社製です。木質ペレットをガス化して電気と熱を造り、隣の上野村きのこセンターに供給しています。木質ペレットの生産の半分は、木質バイオマス発電施設に併設された上野村きのこセンターの電力に変わります。こちらは関東最大の規模を誇るきのこの栽培施設で、しいたけ栽培の温度管理にかかるエネルギーコスト低減のため、木質ペレットをガス化して電気と熱をまかなうドイツ製の発電施設を2015年に日本で初めて導入しました。
発電出力は180kW、熱出力270kWという小規模なものですが、村産ペレットを村内で利用する「森林資源の地産地消」には十分なものです。
木質ペレットの製造のコストなどを考えれば、採算性がずば抜けてよいわけではありませんが、最初の目的である村の林業の活性化に貢献し、きのこセンターで移住者の雇用が生まれています。村営だったきのこセンターも独立して株式会社となり、経営の黒字化も果たせています。上野村の木質バイオマスエネルギーは、従来のたくさん発電して売電収入を得る目的ではなく、村の森林資源で地場産業を発展させ、雇用を作り、人口を増やし、村を存続するための礎となっていることを学びました。
今回の視察研修では、世界遺産を視察しながら観光としての活用状況や、行政主導の産業の育成や雇用創出による循環型持続社会を学ぶことができました。歴史的な観光資源や豊富な自然資源があっても、それを有効に利活用し、雇用に結びつけ、経済を循環させる人間の知恵が重要であると感じました。
労福協として富士宮市の限りある資源を効率的に活用し、持続可能な形で循環させながら利用していく社会の実現に向け理解を深め、行政への提言活動などに役立てていきたいと考えます。
あらためまして、今回の視察研修にて丁寧なご説明・ご案内をいただきました、富岡製糸場のガイドの方、一般社団法人上野村産業情報センターの石井様に感謝を申し上げますとともに、ご参加いただきました役員のみなさま、大変お疲れ様でした。
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