2022年11月8日(火)に富士地域労福協主催「福祉とくらしのセミナー」を開催しました。コロナ禍で開催見合わせが2年続き、3年ぶりとなります。今回は慶応義塾大学経済学部教授の井手英策氏をお招きして「ベーシックサービス、その先へ」をテーマに、地域では初のオンライン(役員のみ会場聴講のハイブリッド)開催とさせていただきました。
井手先生の提唱される「ベーシックサービス」という言葉に耳なじみのある方は少ないようでしたが、幼保教育の無償化や大学の一部無償化など、国内にもその潮流は広がってきており、世界的にも広くこの考えに基づく政策などが実現されようとしています。
講演では、「ベーシックサービス」=医療・介護・教育・障がい者福祉などの誰もが必要とする、あるいは必要としうるサービスの完全無償化をテーマに、日本社会の生きづらさ、「格差是正」という考え方の限界、「ベーシックインカム」の実現不可能性=「ベーシックサービス」の実現可能性、この社会制度実現のための財源の問題、などについて具体的な数字や事例を用いて丁寧に説明いただきました。
一例では、一昨年度支給された新型コロナウイルスに対する特別定額給付金13兆円の財源をもってすれば、大学・介護・障がい者福祉を無料にし、医療費の自己負担を現状の3割から2割に引き下げ、所得の低い方への住宅手当として月額2万円を1200万世帯に給付し、さらにリーマンショックの際に生じた350万人程度の失業者に対して月額5万円の給付を行う、こうしたサービスのすべてが実現できたということです。
加えて、こうしたベーシックサービスによる万人の生活保障を実現していったとしても、サービス給付にも限界があり、必要な人にベーシックサービスにアクセスしてもらうためには、人と人のつながり、地域社会が一体となったチームアプローチが必要との、「その先」についても説明をいただきました。この人と人のつながりでは、職場においても仲間通しの見守る力、気付いてあげられる力が肝要であり、苦しい思いをしている方やその家族をソーシャルワーカー等専門家に繋げベーシックサービスへとアクセスさせていくためにも、労福協や各会員団体の世話役活動が重要であるとの指摘が大変印象的でした。
難しい論点も多数ありましたが、井手先生の熱意のこもった分かりやすい説明はとても興味深く、会場にお越しいただいた皆さんは大変熱心に耳を傾け、あっという間に時間が過ぎてしまいました。ネットでの聴講も多くいただき、会場20名、ネット聴講166名の合計186名の皆さまに大変役立つ情報をお届けできたのではないかと思います。
富士地域労福協では、今後も皆さまの生活に役立つ情報発信ができるよう福祉とくらしのセミナーを開催して参ります。来年の講師もお楽しみにしていただきますとともに、来年はみなさんが会場で聴講できる環境であることをお祈りしています。
最後に本セミナー開催に向けてご尽力いただきました役員の皆様や関係団体及び、ご後援いただきました各団体の皆様に厚くお礼申し上げます。