2021年12月19日・20日の2日間、2年に1度恒例の労福協役員視察研修を実施しました。幸いにして新型コロナウイルス感染症も沈静化しており、感染症への対策を十分検討した上での実施判断となりました。今回は、SDGsの観点に加え、戦後に大規模労働争議や労働災害の現場となった福岡県の世界文化遺産、三池炭鉱と北九州市エコタウンセンターを訪問し、エネルギー問題の今昔を通じながら、炭鉱労働者を巡る厳しい歴史背景と最先端の再生可能エネルギーへの取り組みに触れ、労福協役員としての知見を広げることを目的としています。
当日は、小林会長以下、総勢6名の役員で早朝に富士山静岡空港を出発、福岡に向かいます。機内も感染症対策の換気が施され、2時間弱という短時間での移動が可能となりました。
初日は2015年にユネスコの世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に登録された三池炭鉱に関わる施設を視察しました。三池炭鉱は福岡県南部、有明海に面した大牟田市に位置します。明治から昭和にかけて「黒いダイヤ」とも称された石炭採掘を巡っては、日本の産業革命のエネルギー供給源としての重要な役割があった一方で、その裏にあった「囚人労働」や与論島などからの「移住者労働」など危険・過酷・人権侵害的な労働実態等、暗部の歴史も学ぶことができました。また、労働者に関わる者が「三池炭鉱」の名を聞けば必ず思い出される「三池争議」と「炭塵爆発事故」。いずれも“戦後最大”の労働争議、労働災害と言われていますが、この経緯なども、炭鉱労働者の子息であるガイドさんから資料にないことまで解説をいただき、労働者の安全や権利が認められるまでの経過に、あらためて思いを馳せる時間となりました。
2日目は北九州市エコタウンセンターを視察しました。北九州市北部の響灘に面する次世代エネルギーパーク内には、十数基の風力発電の風車、太陽光発電施設、バイオマスによる再生可能エネルギーなどが集まり、国内最大級の再生可能エネルギーの集積地となっています。また、2025年に向けては響灘に多数の200m級の洋上風力発電施設を設置する計画が進められており、政府が進める2050年の「カーボンニュートラル(脱炭素)」に向けた革新的な取り組みが進められていました。クリーンエネルギーは、SDGsの17の目標の1つであると同時に、今後の私たちの暮らし方にも大きく関わります。講義の後には、財源、産業としての広がり、送電設備の問題、騒音問題や住民理解、漁業や自然環境との調和など、様々な観点での質疑や意見交換をさせていただき、地域の特性を十分考慮しながら進められている事業であることが理解できました。
今回の視察研修では、石炭から再生可能エネルギーへの移り変わりを通じながら、その裏側にあった労働者を巡る厳しい歴史や、エネルギー政策の長期的な視点などを学ぶことができました。労福協としてもさらに理解を深め、行政への提言活動などに役立てていきたいと考えます。
最後に、熱心にご説明くださいました大牟田観光ボランティアガイドの境様、北九州市エコタウンセンターの松井様、また感染症対策に留意いただきながら2日間の移動をご支援いただいたドライバーの西津様に深く感謝申し上げます。ご協力、大変ありがとうございました。
参加役員の報告はPDFでアップしていますので是非ご覧ください。